2024.12.23
横浜まち情報
某有名口コミサイトで名店に選出!ローカルをもうならせるスパイスカレーの専門店「Spice Corner Benzie」
東京ガス横浜中央エネルギー(ヨコエネ)は、横浜市内の8つの行政区(西区・神奈川区・港北区・都筑区・青葉区・旭区・瀬谷区・鶴見区)にて、東京ガスのサービス窓口を担当しております。そこで、日々地域のお客さま先で働く私たちだからこそ知っている、地元のお店情報をご紹介します。
南インドとネパールで食される、カレーの「定食」
ドアを開けた瞬間、スパイスの香りに包み込まれました。民族楽器の音色でしょうか、エスニック音楽が異国情緒を高めています。
訪れたのは、京急線戸部駅から徒歩2分の場所にある、スパイスカレー専門店「Spice Corner Benzie(スパイス コーナー ベンジー)」。飲食店の口コミをまとめた某有名サイトで、名店に選出されたお店です。看板メニューは、南インドの「ミールス」とネパールの「ダルバート」で、ご飯・カレー・スープ・副菜がセットになった、「定食」のような料理。お店では、2つのジャンルを週替わりで提供しています。
取材当日は、南インド料理「ミールス」の日。手書きのメニューには、「ボニート・コザンブ」「サンバル」「カーラン」など、見たこともないカタカナの料理名が並んでいます。笑顔が素敵なスタッフの方に聞くと、「どのメニューにも同じ副菜がつくので、カレーの種類を選ぶだけでいい」とのこと。迷った挙句、4種類すべてのカレーを頼むことにしました。
辛味・酸味・甘味・苦味が融合する一皿に、手が止まらない
銀色の食器が運ばれてくると、インド米・日本米などがブレンドされたライスを中心に、カレー・副菜・スープがくるりときれいに盛り付けられています。
この日のカレーは、チェティナード地方のチキンカレー「チェティナードチキン」、ローストしたココナッツ入りのマトンカレー「マトンロースト」、インド料理には欠かせないマメ科のフルーツ「タマリンド」でかつおを煮込んだ「ボニート・コザンブ」、カリフラワーが入った豆の煮込み「ゴビ・ダル」でした。
「チェティナードチキン」は、スパイスカレービギナーの筆者には、一番なじみやすい味。しかし、口に入れて数秒後、今まで食べたことのないスパイスたちが主張を始め、あっという間に複雑な辛味が押し寄せてきました。「マトンロースト」はココナッツが入っている分、ややマイルドな味。「ボニート・コザンブ」はさらさらとしたカレーで、あっさりしたかつおの風味……と思いきや、ピリッとスパイシーな刺激があとから追いかけてきます。「ゴビ・ダル」は豆の優しいまろやかな味わいで、次第にヒリヒリしてきた舌をクールダウンさせるのにもってこいでした。
少し酸味のあるスパイシーなスープは「サンバル」と呼ばれ、現地の人はスープをご飯にかけ、その上に好きなおかずを乗せて食べるそうです。5種の副菜は炒め物やあえ物で、カレーに負けず劣らず辛いものもあれば、はし休めにぴったりの素朴な味付けのものもありました。
辛いものがそこまで得意ではない筆者は、辛い味・マイルドな味の料理を交互に口に運び、ときにラッシーの甘さに助けられながら完食。お腹はとうにパンパンだったものの、辛味・酸味・甘味・苦味と、一口ごとにくるくると変わる味わいに、スプーンを運ぶ手が止まりません。「食べきった!」という達成感に満ち溢れていると、「いやー、よく食べましたねぇ」とねぎらいの声が。
「女性一人で4種がけを食べる方は、なかなかいませんよ(笑)」
店主の佐々木 健太郎(ささき けんたろう)さんが、微笑を浮かべながらこちらを見ていました。
3年目で有名店と肩を並べる快挙に……「まずい」
佐々木さんが飲食店の開業を決意したのは、40歳のときのこと。「どの業態で独立するか」と考えたとき、好きだったラーメンが選択肢に上がったものの、最終的に選んだのはスパイスカレーでした。当時はスパイスカレーブームが全国に広がり、間借り営業が流行っていた頃。「自宅でも研究や試作がしやすく、間借り店舗ならスモールスタートしやすいだろう」と選んだ道でした。
前職を辞めた2018年、まずはカレー作りの知見を広げるため、関内の福富町にあるスパイスカレー専門店「丸祇羅 (マルマサラ)」のスタッフとして働き始めました。現在、同店は横浜随一の有名店として知られていますが、当時はまだ間借り営業をしていた頃。働きながら、さまざまな店舗のスパイスカレーを食べ歩いていたとき、出会ったのが南インド料理「ミールス」でした。
「カレー単体で食べるのではなく、違う料理と混ぜる食べ方に面白さを感じて、自分でも『ミールス』を作り始めました」
翌年から、同店で働き続けながら、自分でも2軒のスパイスカレー店を間借り営業するように。その頃、自身のお店に通ってくれていた、ネパール人のお客さまと仲良くなったのがきっかけで、ネパール料理「ダルバート」も作り始めました。しかし、コロナ禍により間借り先が移転することになり、別で掛け持ちしていたアルバイトも営業縮小の影響でやめることになってしまったのです。
「こういう機会にこそ、動かなきゃダメなのかなと思って」
2021年2月、44歳で「Spice Corner Benzie」をオープンしました。現在の場所を選んだ決め手は、家賃の安さだったと言います。
「固定費が高いと、 好きなことで勝負するのではなく、目先の売上を立てることに注力しちゃいそうじゃないですか。『とりあえず売れればいいだろう』って。でも、そうなると自分のやりたいことじゃなくなっちゃうから」
当初は近所に住む人や働いている人の来店が多かったものの、段々とスパイスカレー通のお客さまが増え、都内からわざわざ訪ねて来る方も増えていきました。そして、2024年7月には、飲食店の口コミをまとめる某有名サイトで名店に選出されたのです。オープンから3年というハイスピードでの快挙に、周囲の飲食店仲間は一様に驚きました。
「名店に選ばれたことは、お客さんのInstagramで知ったんですよね(笑)『え、うち選ばれてるの?』って調べたら、本当にのってて。『いつかは』とは思っていたけど、目の当たりにしたら『いや、これまずいじゃん』って思っちゃいました。ここからハードルが上がりますからね(笑)」
年1回の「答え合わせ」がローカル絶賛の味を生む
佐々木さんが作る料理は、本場の良さを保ちながらも、日本人にも食べやすい味に仕上げられています。
「最初は現地のレシピで作るんですよ。食べてみて、『ローカルの味に近いけど、日本人にとっては刺激が足りないな』と感じたら、レシピ上のスパイスを1つか2つ強くするんです。おいしくなるからといって、レシピにない材料は入れません。そんなことをしたら、まったくの別物になってしまいますから」
また、「ミールス」や「ダルバート」以外にも、「南インドやネパールの料理のおいしさを、広く知ってもらいたい」とも考えています。
努力が功を奏したのか、副菜でいただいた「砂肝と大根のウールガイ」はサイドディッシュの人気No.1に。「これで呑みたい!」という声が多かったことから、単品メニューに追加されたのだそうです。なお、「バナナとプチトマトのカーラン」は、一見するとサラダのような組み合わせですが、スパイシーで濃厚な味付けに誘われて、つい筆者はライスを頬張ってしまったのでした。
「現在の提供スタイルが多くのお客さまに浸透したら、さらに現地の味に近づけていきたい」と、佐々木さんは語ります。
「日本の食べ物はおいしいから、数ある外食店から選んでもらうのは、なかなか難しいです。でも、我流(がりゅう)で作って、自分っぽい料理の味になっちゃうのは嫌なんですよね。徹底してローカルのレシピを尊重することで、自分自身も成長できるし、お客さまにも喜んでもらえる。そう信じて作っています」
今は年に1回ネパールを訪れ、人気のレストランをリサーチしたり、食材の買い付けをしたりしているそうです。けれど、一番の目的は「答え合わせ」をするためなのだとか。
「本場の味を食べて、自分がネパールらしい料理を作れているのか、自分勝手な料理を作ってしまっていないか、確かめているんです。この先もいっそう、現地らしい料理を作れるようになるために、欠かせないイベントですね」
オープンから3年。「これまでで一番うれしかったお客さまの反応は?」と聞くと、「『本場の人が作るよりおいしい!』とネパール人のお客さまから喜ばれたこと」と満面の笑みがこぼれました。毎年の「答え合わせ」が、ローカルの舌をもうならせるスパイスカレーを生み出しているのだと、実感しました。
2つの食文化が織りなす、魅惑のスパイスカレーの世界へ
2025年からは、これまでの定食のほかに、南インド・ネパールそれぞれのコース料理の提供を予定しています。カレー以外の前菜や魚料理・ご飯ものなど、知られざるおいしい一品が、まだまだたくさんあるそうです。お店ではなかなかお目にかかれない、現地ならではのアルコールも多く取り揃えています。本格的な料理と一緒に味わえば、たちまち異国を訪れているような気分になれそうです。
「ミールス」と「ダルバート」のどちらが楽しめるのか、当日のメニューは公式Instagramに掲載されています。日によっては満席になってしまうこともあるため、事前の予約がおすすめです。
スパイスカレー通だけでなく、ローカルにもその味が認められている、「Spice Corner Benzie」。ここでしか出会えない本格スパイスカレーの世界に、あなたも足を踏み入れてみてはいかがでしょうか?
注)当記事でご紹介したメニューや価格は、2024年12月時点のものです。「Spice Corner Benzie」さんにインタビューを行い、いただいたコメントを編集して掲載しています。
【店舗情報】
住所
横浜市西区戸部本町13-8
営業時間
月・火・木・金
11:00 - 14:30(L.O. 14:00)
17:00 - 21:30(L.O. 21:00)
土・日・祝日
11:00 - 15:30(L.O. 15:00)
17:00 - 21:30(L.O. 21:00)
定休日
水曜日
電話番号
045-295-4828
取材・執筆・撮影/弓橋 紗耶